西暦に代わる新たな暦を考えてみる

我々人類が広く使用している西暦は、キリスト教の始祖であるイエス・キリストの誕生年が基準となっている。西暦における現状と、それに変わる新暦について考察する。

●西暦の様々な問題点を上げる。
1.前述の通りイエス・キリストの出生年を基準としているのだが、実際は紀元前4年説が有力で紀元1年ではないとされる。
2.特定の宗教の出来事が基準となっている。よって自然科学的にも、人類社会的にも関わりが薄い。
個人的には、特定の宗教の出来事を基準とする紀年法を採用するのはいかがなものかと考える。非キリスト教国ならば少なくともこの点に疑問を抱く人がいるだろう。筆者である自分もその一人だ。
3.西暦0年が無い(つまり紀元前1年の翌年が紀元1年である)。このせいで紀元前後を跨ぐ年の計算がややこしくなっているし、人類の歴史を振り返るにあたっても理解を妨げている。それにこの付近の時代の出来事も意外とあるので。

●次に、西暦の問題を解決するため、地質学者のチェザーレ・エミリアーニが提唱する人類紀元(HE)の特徴を上げるとこんな感じ。
1.HEの年は西暦に10000を足すだけでよい。尚日付と曜日は変更なし
2.「0年」(=西暦紀元前10001年)も定義される。この年の出来事は完新世及び人類文明の始まりに近い。
よって紀元前10001年以降の出来事ならHEの年を正の数で表現可能。
因みに狩猟民族の時代(農業や金属加工の知識はまだ無かった)に人類史上初の巨大建造物である「ギョベクリ・テペ」が建築したのもこの辺りの年(凡そHE 0年頃)らしい。

この性質上、地質学的、考古学的、人類学的、年輪年代学的、歴史年代測定が容易になる。
人類の歴史的出来事を単純に増加する年代で一覧で表せる。西暦における紀元前は値が大きくなる程古くなり、年の計算がややこしくなるのに対し、人類紀元では両者とも完新世開始以降の出来事なら年計算が単純に引き算するだけですぐに出せる。
人類紀元以外の暦が始まるのが完新世が始まってからかなり後になる(数ある暦の中で人類紀元の年の数が一番大きい)ので、他の暦との年代を変換するときに役立つ。
完新世開始の具体的な年代が紀元前9701年頃である(西暦2013年までの調査による)。これはエミリアーニ提唱の完新世開始時期より約300年新しい。
宗教の出来事が基準の西暦とは異なり自然科学的な出来事が基準となっているので、宗教の依存性から少しは解放されるだろう。よって非キリスト教国の人々は無駄にキリスト教に関わらなくて済む意義が多分あるのではないか。

●筆者が提案する紀年法、即ち産業紀元(Industrial Era、IE)を以下に示す。

1.産業革命の発生時期が西暦1760年とした時のIEを0年とし、西暦1760+n年=IEn年、西暦1760-m年=IE-m年と定義する。例えば、西暦2021年はIE261年、江戸幕府成立年である西暦1603年はIE-157年である。
西暦紀元前の場合は、前1+n年=IE-1760-n年となる。例えば、日本建国年である紀元前660年はIE-2419年である。
1760という数字を使った理由としては、
・1760年代~70年代の英国で最初の産業革命が起きたこと(諸説あるがこれが最有力)
・世界の歴史まっぷの記事によると「1763年にイギリスで産業革命始まる」とある他、右側の一番上に開始時期が1760年とある
・コトバンクの記事にも年表が1760年から始まっている
・「産業革命」でググると発生日が1760年と出てくる
・1760年頃を境に技術革新の速度が格段に上がる。これに伴い社会構造が大きく変化するようになる。
と、こんな感じだろう。

2.最初の産業革命発生から百数十年かけて世界各地に広まった。こうして人類社会的に非常に関わりが深い現代社会の基盤が整えられたということを考えると、キリスト教基準の西暦を使うより産業紀元を使うほうが適切だろう。人類紀元同様特定の宗教に依存しなくて済むのも大きい。
3.西暦も人類紀元もグレゴリオ暦を使用するのに対し、産業紀元は世界暦を用いる。
世界暦の詳細についてはここここへ。
4.西暦と比べ桁が1つ落ちる(IE999年まで)。

世界歴の性質としては、
・ウィキペディアの記事の欠点に「アブラハムの宗教における安息日の概念」や「13日の金曜日」があるが、一宗教としての欠点でしかないのでこれは無視しても良い。
・無曜日を設けることになるので、従来のユリウス日から曜日を計算する公式に代わる世界暦専用の曜日を計算する公式を新たに作る必要がある。
・カレンダーを扱う職の仕事は大きく減ってしまうのかという意見が一部あるが、春分の日や秋分の日は毎年同じ日であるとは限らない(更には祝日法改正にも考慮する必要あり)他、1日の予定を書き込む形式のカレンダーでは複数ヶ年の使い回しが利かないことが多いので、結局は毎年刷り直さなければならない。
ぐらいか。

現在の人類はグレゴリオ暦が一般的に用いられている。筆者の考える産業紀元をもし導入しようとした時は同時に世界暦への移行も考える必要があるだろう。

2月だけ短い理由と西暦、人類紀元、産業紀元の対照表、その他諸々はまた後日で。

ではでは。

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